ちょっとした余生

20代を全力疾走したせいで 今はちょっとした余生のよう

いい女と私は骨格から違う

 

土曜日、2ヶ月おきに通っている美容院に無事行くことが出来た。

次回予約をすれば値引きしてもらえるので、毎回2ヶ月後に予約を取っている。

セミロングだった髪をばっさりとショートカットにしたのが2年前。

それから、目指せ程よいロングと思い伸ばしているのだがこれがなかなか伸びない。

やっと肩につくくらいまで伸びたのだが、私は剛毛かつ多毛、そして天パなのだ。

幼少期は全く髪の毛が生えず、赤ちゃんの時の写真は全部ハゲ。赤ちゃん筆も作ることが出来ず年中さんまで切らずにやっと肩甲骨まで伸ばすことができたが、それはそれは立派なお姫様たて巻きカールだった。

天パは年齢とともにクルクルからうねりに変わっていったのでそう大した悩みではないが、多毛がすごい。もう増えるわかめにも劣らぬ勢い、毎回驚く量を梳いて、2ヶ月後にはまた増やして美容院へ行く。自分の髪の毛ながらそのシステムがよくわからない。

赤ちゃん時代のハゲっぷりはその後の多毛への助走だったのか。

プリンは気にならないが多毛は生活に支障が出まくるので、やっとスッキリして気分爽快だ。

 

そして日曜日、彼と街中の電気屋へ向かった。新生活で購入する掃除機をトルネオからダイソンに変更したそうで、実機を見るためにはせ参じた。

結局決めたのはこちらの商品。

 私としては、掃除については丸投げでお任せすると宣言しているので、ダイソンだろうがトルネオだろうが好きなものを選んでくれたらと思う。

ただ、毎回この手の家電を見ていて店員さんに話しかけられると、必ず私に向かって熱心に説明されるので、常に彼の斜め後ろに立つようにしている。

私がこだわりたいのは、冷蔵庫と鍋フライパン包丁などの調理器具だけだ。

 

実機の性能に満足し、お昼ご飯を食べてカラオケへ行くことにした。

ジャンカラは、無人受付となっていた。機種をお選びくださいの画面に出てきたのがJOYSOUND一択で我々は泣いた。DAMを愛しているからだ。

でも、フリータイムで6時間くらい楽しんだ。本人映像が少ないのと音質が好きではないのが難点だが、歌いたい気持ちがあっさりと勝った。

 

歌い終わってから、晩御飯何食べようかとぶらついていると、オシャレイタリアンが目に入った。中にはオシャレ女子会をしている人達やオシャレカップルが肩を寄せ合ってワインを飲んでいるのが見える。

私の職場の近くだったので、ここのイタリアンは立派な窯があるらしいからピザが美味しいかもしれないねと言うと、俄然気になったようでそこに決まった。

やたらオシャレな空間に入ると、馬鹿みたいな会話しかしない私たちの口数は途端に少なくなる。

彼はいつもピザといえばマルゲリータしか食べない。私も無難で安心なのでマルゲリータにしたいところではあるものの、同じのを頼むのは勿体ない気がしてチーズ系のピザを頼むようにしている。

メニューを見ると、4種のチーズピザはちみつがけというピザがあった。4種のチーズまでは最高なのに、はちみつをかけるというオシャレさ。未体験の味を想像できないので怖い。

結局、私がイタリアンを食べるときの定番カルボナーラを頼むことにした。

彼は下戸かつ運転手なので、私だけお酒をいただくことにして、メニューを見る。

ここはワインかしら。店員さんを呼び、口から出てきたのは「ジンジャーハイボール」だった。ジンジャーハイボールは私の一番好きな飲み物だ。ワインでオシャレに決めたかったのに、メニューにあるのを見つけてしまいつい頼んでしまった。

 

窓際のテーブル席で窓を背に座ると、カウンターで食事をしているオシャレカップルが真正面になるのでやたらと目に入る。見るからにいい女風の彼女は、時折彼氏にしなだれかかるように甘えている。まだ19時すぎだ。そして、何か面白かったのだろう、二人が笑った拍子に完全なる0距離になった。彼女は彼の膝を叩きながら笑い、彼の顎に彼女のおでこがひっついた。しばらくそうして笑いあっていた。

aikoのカブトムシってこんな感じなのかな。あなたの耳に寄せたおでこ。顎だけど。

こんなイチャイチャを見せられるなんて耐えられない。思わずうつむいて笑ってしまう。彼に、何?どうした?と問われてもこの面白さをうまく伝えられない。

悲しいかな私はお酒がべらぼうに強い、あんな風に酔うこともなければ、酔ったフリも出来ない不器用さ。正直彼女のテクニックがうらやましかった。

私たちのテーブルで交わされた会話と言えば、「最近お客さんと真面目な話してるときに私マスクの下でゴリラの真似してるんだよね」というしょうもない内容。こんなのが彼女でうちの彼は可哀想だ。

 

店員さんは全員もれなく気が利いていて、本当に良いタイミングで配膳や補充をしてくれる。そんな店員さんの動きを眺めていると、カウンターの彼女と目が合った。そのあと割とすぐに彼氏と笑われると、私のことをあざ笑ってる気がするからどうか私のことは視界から消してほしい。

 

サラダやポテトを食していると、良いタイミングでマルゲリータが運ばれてきた。

お決まりの具材が乗っている。どこで食べても後悔しない、それがマルゲリータ

食べてみると、バジルの葉の香りがいつもよりも強い気がする。もちろん良い意味で。

お店の雰囲気も相まって、かなり美味しい。二人して関心しながら食べ進める。

カルボナーラも濃厚で美味しかった。胡椒がなかなか効いていたが、終始オシャレな味だねと言い合って食べた。ほんと単純。

2杯目のお酒こそ何かオシャレなものをと思ったのに結局ジンジャーハイボールを頼んでしまった。どうしても冒険できず安定を求めてしまう。

 

お会計を済ませて外にでたあと彼に、私はあのオシャレ彼女のことを人前でベタベタ男に甘えるやべーやつって思って見ちゃったけど、オシャレ彼女はきっと私のこと、何見てんだよちんちくりん女って思っただろうね。と言った。彼は笑っていた。

きっと私の方が彼女より年上だろうに、なぜかいつまで経っても私はちんちくりん。童顔だし、身長も高くなければ手足が細長いわけでもない。中肉中背。平成生まれなのに、骨格がすごく昭和な気がする。弟は手足が長細いイマドキの骨格してるのに。

でも、幸いこんなちんちくりんでも付き合ってくれる人がいるわけだし、誰に見られても私は私と胸を張れる、心持ちだけはいい女になりたいものだ。

 

まずはマスクの下でゴリラの真似をするのをやめよう。そう決めた。