55インチのテレビとご挨拶
この日記の後日談。
いよいよ搬入の日、朝早くに別の荷物が届いた。
掃除機、トルネオだった。我が家の掃除機はダイソンだったが、長年使い続けていると
急に異音を発するようになってしまった。
スイッチを入れた途端、ピーピーラムネでも吸い込んだのかと思うほどの高音で
「ガーガー(ピーピー!)」と騒音の二重奏。
先日、アラームでも起きられない私がその掃除機の音で飛び起きてしまったくらい
うるさく唸るダイソンとおさらばするために、テレビを注文したタイミングでトルネオも購入していたのだ。
とはいえダイソンもまともに使っていなかった私は、母のパーツを出すたびに漏らす
「軽い!」「見てこのスキマノズル!」「もっと早く買えば良かった~!」に全く共感できなかった。
ひとしきり感動したあと、彼が来るから片付けなきゃ!あと3時間しかねえ!とせわしなく動き始めた。
なんとなく、家庭訪問前と雰囲気が似ていると思った。
そんな母を手伝うわけもなく、先にお昼を食べてからうちへ行こうという話だったので
お昼を食べるため彼氏と合流。
そのあと自宅の駐車場に車を止めて、テレビが届くまでキャッチボールで汗を流した。
しばらく球を投げ合っていると、母から「母の化粧は終わりました。」というLINEが入る。化粧の進捗状況がくるとは思わなかったが、これすなわち準備が整ったという証拠なので家に向かう。
ドアを開けるとちょうど母が立っていて、すかさずはじめましてと挨拶合戦が始まる。
これはもう何とも言えない気恥ずかしさ。こちら母です、彼氏です、なんてスムーズな導入もできず、そそくさと部屋に荷物を投げに行く薄情な私を許してほしい。
今回の目的はテレビの設置なので早速テレビの設置に取り掛かる。
ダイニングまで運ばれていたテレビの箱を見て笑いそうになった。
55インチ、でかすぎる・・・!
ダイニングを通ろうと思うと、箱のせいで一人通るのがやっと。すれ違えない。
梱包材があるから箱こんなに大きいんだよね、そうだよね、と言いつつ開封すると、梱包材は大した嵩になっていなかった。
これ、リビングに置くってのかい・・・?
なんとか二人で持ち上げて、組立パーツを組み立ててもらう。
持ちあげて思ったけど、これ彼氏いなかったら無理ゲーだったわ。
私も55インチ、ナメてた。
そこから配線、レコーダーとうまくつながらなくて多少悪戦苦闘したものの、なんとか無事設置完了。
母の感想は、「え~やっぱり大きすぎる!どうしよう!ヤダ~」であった。
母は私が学生の頃から、同級生に好かれるとても陽気な母として名を馳せただけあって
彼氏にも果敢に話しかけている。
彼氏には事前に、母は私の500倍陽キャだから話についていくだけでいいヌルゲーだよって伝えていたから、のちにその通りだったと言わしめた。
設置後私が部屋に荷物を取りに行っている間に、母は彼に 本当にうちの子でいいの?返品不可だよ?と言ったらしい。リビングに戻った際に母から今こう言ったのよ~と言われたので隠す気もない話だったようだ。
娘は加藤ミリヤや東京事変など割と曲がった恋愛観の歌ばかり聞いて青春時代を過ごしてきたのに、その母親からまさか西野カナのような王道なセリフが出てくるとは。
遺伝はなかなか複雑らしい。
そもそも娘さんをくださいと言われたわけでもないから、返品どころか購入もされていないのである。気の早すぎるセリフだった。
設置して家を出て、我が家に来た感想を聞いて一番に言われたのが
私の家での一人称が [ 姉ちゃん ] だったことに驚いたということだった。
私には弟がいるため、家では親からお姉ちゃん、弟からはなぜかある時から姉貴と呼ばれている。
なので自分のことも姉ちゃん呼びだったようで、彼に言われて初めて自覚したのだった。
弟はとっくに結婚して家を出ているため、もうお姉ちゃんたる所以はないに等しい。
親から名前で呼ばれることも増えてきたものの、どうしても自然にお姉ちゃんと呼ばれ、自分のことを姉ちゃんと言ってしまうらしい。
何度も家に遊びにきているうちに、とうとうチャイムなしで家に入って来れるようになった数少ない親友にすら指摘されたことがないので、今日という日まで気付かなかった。
新たな気づきをもたらした今回のテレビ設置は、色々と良いきっかけになったと思う。テレビが大きすぎるという問題を除いては。