恥じらった話
私は割と品のない人間だと思う。
おおっぴらな家庭で育ったことが関係しているような気がする。
しかも私の品の無さは、そんなおおっぴらな家庭を作った親でさえ置いていく時がある。
恥じらう姿を期待してニヤニヤと下ネタを振ってくる不届き者が現れると、つい相手が引くようなえげつのない返しで応戦してしまう意地の悪さも兼ね備えている。
まさに自他ともに認める "恥じらいのない人間" として胸を張って生きてきた。(慎め)
もちろんいい歳であるから、数々の失敗から学びオフィシャルな場所では慎んでいる。
そんな私が、思わず何年かぶりに恥じらってしまう出来事があった。
私はアラサーの括りに入ったあたりから、タコに悩まされている。ハイヒールを履くわけでもないのに足の裏にタコが出来、削り取ってはまた出来るイタチごっこを繰り返している。
最近は指にまで出来てしまい、これがゲームでもペンでもない場所で不愉快極まりない為
イボコロリを買いに行こうと思い立って仕事を終えて、薬局へ出向いた。
ちなみにタコについては全く恥じらう話ではない。
今の時期、薬局の雰囲気はかなりギスギスしている。
事実、私が陳列棚の端にあるイボコロリを見つけ出し、貼るタイプにするか塗るタイプにするか迷っている間に、その側面の棚で品出しをする店員さんにイラついた声でマスクの有無を確認する客を2名ほど目撃した。
見たまんまなんだからわざわざ聞かんでも、と客に目をやったついでに側面手前に掛けてある商品が目に止まった。
それがバストップケア。小林製薬のようなネーミングだと思ったがムヒでおなじみの池田模範堂から出ている、バストトップの痒みに!といった文言が書いてある商品だった。
迷わず手に取った。考える前に手が出ていた。
何を隠そう私はアラサーになる前から左乳首の痒みに悩まされていた。ありとあらゆる塗り薬も効かず、彼氏の前でさえ乳首が痒いと悶えるザマだった。
もう乳首が取れるんじゃないかと思っていたから、バストップケアから「やっと会えたね(cv石田彰)」ってセリフまで聞こえた気がした。
考える前に手が出ていたせいで値段の確認が出来なかったので、改めて側面に身を乗り出し値札を探す。
・・・無かった。品出ししている店員さんが居るだけだった。
オーケーオーケー。私はアンタが5,000円でも買うよ。そう意気込んでイボコロリの選定に戻る。
指に貼るのは難しいかしら、液体はどんな感じ?なんて考えていたら、品出ししていた店員さんがおもむろにバストップケアを手に取って、箱をくまなく眺め始めた。
横目で見ると、店員さんは若い男性で、マスクをしているとはいえイケメンの部類に入るとお見受けした。
そんな人がなぜバストップケアを見ているのかという疑問と、同じ商品をまさに今 手に持っている身としてどうにもいたたまれない気持ちを押し殺して、イボコロリに集中する。
すると、イケメン店員はこちらに身を乗り出し、小声で囁いてきた。
「980円です(にっこり)」
動揺した。かなり。
これが女性の店員さんだったり、それこそオジサン店員さんだったら、ただただ感心してほっこりする話だった。
でも相手はイケメン、しかも声の掛け方からして陽キャだった。感心よりも羞恥心が増した。
私は不幸にも陽キャに見られがちな人生を歩んできたが、どちらかと言えば陰キャで苦手なものは陽キャだったりする。
お礼だけはしっかりと伝えて、ノールックでイボコロリを手に取りレジへ急ぐ。
2台のレジが稼働していて、誰も並んでいなかったのでどちらかが空くのを待つことにした。
そう待つことはないと思っていたのに、1台のレジから店員が商品を探しに出て行ってしまった。
まあ良い、もう1台はすぐに空きそうだと思っていたら、「お待ちの方こちらへどうぞ〜」と奥の方から聞こえてきた。
妙に聞き覚えがある、いや違っていて欲しいと願いながらレジへ向かうも
第三のレジ、陽キャイケメン店員がニッコリと待っていた。
バストップケアだけでなく、イボコロリまで見られてしまった。さすがの私もこれには恥じらってしまった。
サードインパクトが起こせるなら今起こしたい、そんな物騒なことを考えながらも、ポイントカードの提示は抜かりない自分がまた滑稽に思えた。
無事こちらが殲滅されたってわけである。
足早に薬局を出て、バスで帰路につくまでにこの心の騒めきを誰かに共有したくてほぼ原文ママで彼氏にLINEしたら
「なんか面白いブログを読んだ気分」と言われたのでブログをはじめることにした。
最終的には今月の購入品紹介や化粧品のレビューでもしていきたいと思ったが、全く見せれるものではないのでこの文章を打った時点でイマドキOLっぽいブログ案は頓挫した。
ちょくちょく出てきたエヴァネタは、単にエヴァ熱が再燃しただけだったりする。
私は小学生の頃から永遠のアスカ推し。
この話はまたいつか。